「最近の旦那はご機嫌ですね」
「そうかな?」
「彼女さんと良い感じなんですかい?」
「君……からかってるんだろう。それ」
「ばれましたか。でも、あんまり楽しそうだから」
「まあ、なかなか楽しんでるよ。新鮮で刺激がある」
「いいですねえ、若くて可愛い彼女。さんでしたっけ」
「うん。そうだグソン、君も恋人を作ったら?」
「いやいや、俺は。いつ死ぬか分からない家業ですしね」
「だからこそだよ。悩みも死も、僕たちを脅かしはしない。なぜなら愛を知ったから。なんて言葉もあるくらいだ」
「……ヘッセですか? 詩集を読んでいましたねえ」
「ああ。ロマンチックなのは好みじゃなかったかな?」
「意外だっただけですよ。旦那がそういうポエムを読んでるなんて」
「たまたまそういう気分だっただけだよ」
「(柔軟というか、気まぐれというか……。本当に子どもみたいな人だ)」
「……あっ、」
「ああ、こぼしたんですか、そのままにしてください。今布巾を」
「熱い。やけどしたかも」
「すぐ冷やしてください(それもずいぶんと手のかかる……)」


「そういえばが君のことを気にしていたよ」
「俺をですかい?」
「仕事のパートナーで家政婦のような男だと言ったら引いてた」
「その説明は……、まあ正しいですけど」
「どう、一度会ってみたら? ここで」
「はは、そいつは面白い。俺も見てみたいですよ、旦那のいいひと」
「君のことは信頼しているからね。会わせてあげてもいいよ」
「そりゃあ、どうも」
「二十も離れていれば妹か……娘のようかな」
「そうですねえ。どんなお嬢さんなのか会うのが楽しみです」


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