「旦那、家政婦でも雇ったんですかい? 最近は洗濯物も溜まってないし、料理をしたようなあともありますね」
「僕が自分でやったとは思ってくれないのかい?」
「ありえないでしょう」
「だよねえ」
「旦那は潔癖だから、家政婦は無理かなあと思ってましたけど」
「家政婦じゃないよ。実は彼女が出来たんだ」
「ほう」
「お見合いサービス、ずっと無視してたんだけど、そろそろ目をつけられそうだから」
「それで出会った人と、ですか?」
「うん。まあ、そんな気なかったんだけど、会ってみたら結構面白い子でね」
「へえ……そんなに気に入るなんて珍しい」
「素質のある子だよ。シビュラ信者のくせに、僕に不信感全開でさ。少しつついてみたくなっちゃって」
「そしたら旦那のほうが落ちちゃったんですか」
「ああ、うん。そういうことかな」
「はは、面白いですねえ。旦那も恋なんかするんですね」
「僕のことをなんだと思っているんだい? ごく普通の人間だよ、僕も」

「それで、相手はどんな女性なんですか?」
「可愛い子だよ。ごく普通の今時の子。まあ賢いし、年の割にはしっかりしてるかな」
「へえ。うらやましいですねえ、若い子なんて」
「僕はアラサーのくせに生活力ないって怒られてばかりだけど」
「はは、それは聡い。旦那のことをよく見ているようですねえ」
「うるさいなあ。ああ、グソン、ついでに紅茶のおかわりをお願いするよ」
「はいはい。少々お待ちを」

「(今更改まって『彼女』だなんて、可愛いことを。どこまで本気なんだか……)」
「グソン、あと、なにかお菓子がなかったっけ。おなかがすいた」
「ああ、一緒に持って行きますよ。待っててください」


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