――――シビュラ自動恋愛判定システムって?
 職業訓練校卒業学年進学時に恋人がいない場合、シビュラシステムがPSYCHO-PASS色相・性格・職業・趣味趣向など、あらゆる項目において厳正な相性判断を行い、恋人として相性の最も良い異性を1〜5名ほど選定し仲介をしてくれるサービスのこと。少子化対策のために2075年より運営開始している。通称「お見合いサービス」。



『おはようございます! 4月7日、月曜日。天候は晴れ。今日の様のPSYCHO-PASSは良好なペールホワイトです。メッセージが1件届いています!』

 朝、新学期のはじまりだと告げるホロアバターの声で目が覚める。寝ぼけながら受け取ったそれは、ついに届いたお見合いサービスの通知だった。
 高等学校を卒業してからというものわたしに恋愛沙汰は一切なく、毎日をなんとなく過ごしているうちにうっかり職業訓練校の最終学年になってしまっていた。就活生になるころには、さすがに彼氏の一人や二人いると思っていたのに、いまわたしの目の前には「シビュラ自動恋愛判定結果」が容赦なく表示されている。最初にその存在を知ったときはなんて素敵なシステムだろうと驚いたものだ。恋人がいない人に相性ぴったりの相手を紹介してくれる。シビュラが適性判断をして選出してくれた結果ならば、それは間違いなく運命の相手なのだろう。

 相性判定システムは点在しているけれど、それを強制的に通知されるのがこのシビュラ自動恋愛判定システムで、社会に出る前にまともに恋愛してくださいというシビュラからの通告でもある。恋愛時のPSYCHO-PASSデータが不足しているからその測定も兼ねてる、なんて噂が飛び交っていたけれど真相はわからない。シビュラが推奨してくれる相手だから、きっと間違いない相手なんだろうけれど。わたしはどうにも、お見合いなんかをする気にはなれないでいた。シビュラ結婚に反対している、とかそういうわけじゃなくって、単純に彼氏を作るという気分になれないでいるだけだ。

 メッセージを開けば、3人の男性の写真といくつかの情報が載っている。たしかに見た目は好みだし、条件もまあ無難な人ばかり。でも別に、会いたいなんて気も起こらない。やっぱりメッセージを見なかったことにして捨ててしまおうか。まだ1回目の通知だから、応じなくても催促はされないだろうし。
 そうホロアバターに頼もうと口を開いた瞬間に、新しい音声メッセージが届いた。差出人は……お母さんだ。嫌な予感がしつつそっと開けば、予想通りの言葉が聞こえてくる。

『お見合いサービス、来たでしょう? 一人とくらい会ってみなさいね。お母さんも、お父さんと出会ったのはそれだったのよ。ちょうどあんたと同じ年のころかな。お父さんは当時、保険会社で営業をやっててね……』

 ああ――――ここで安易に断ったら、お母さんになんて言われるか分からない。まあ、別に本当にお付き合いしたり、結婚したりするわけじゃないんだし、一回会ってみるくらいならいいか。シビュラがわたしに勧めてくれた人なんだからきっと悪い人ではないはず。どうせ彼氏もいないし、周りに好きな人がいるわけでもないんだし。とりあえず会ってみるって、ことで。

「……まきしま、しょうご」

 一番上にいたこの人が、一番好みだ。ちゃんと見たらすごく格好いいし、職業も公務員で、色相もすごく落ち着いてる。驚いた。こんな完璧なイケメンと相性良いって言われてるんだから、もしかしてラッキーだったのかも。
 うん、会ってみたい。なんかテンション上がってきた。


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