☆彡キスをねだってみました


咲也の場合 談話室でふたりきり。隣に座る咲也が意識しているのがなんとなく伝わってくる。ねえ、と覗き込めばドギマギ唇を引き結んで「えっ、な、なんですか」と挙動不審な反応が新鮮でかわいい。キスしたい、というのを目で訴えてみる……けれど鈍感な咲也には効果なし。ふたりきりだから、その……とぼそり呟けばようやくハッとして頬を赤らめる。「あ……ごめんなさい、俺、気が付かなくって」ソファに置いた拳をきゅっと握りしめて顔を近づけてくる咲也。「キス、してもいい、ですよね……?」優しさゆえの一言がかえって照れくさい。一瞬だけ触れた唇はすぐに離れて、真っ赤な顔でこちらを見やる咲也の瞳は潤んでいる。「嬉しいです。俺もずっと……したいな、って思ってたから」幸せそうににこにこ笑う咲也。真正面から浴びせられる天使オーラにノックアウト。優しさの中に男子高校生の勢いを薄っすらと感じる青いキスでした。

真澄の場合 談話室でふたりきり。そういう雰囲気に持っていかれるんだろうな〜と思っていたら、どういうわけか迫ってこない。具合でも悪いのかな?と覗き込めばクールな瞳に見つめ返される。「どうかした?」いや、わたしは別に。「……?そう」どうやら真澄くんはいつも通りの様子。物足りなさを感じている自分が少し恥ずかしくなり、ソファの背もたれに身体を預けて顔を覆う。はあ。「やっぱり何か、変。具合でも悪い?」ち、違う。ただ……。言いづらくって視線を逸らす。ぴんと来たらしい真澄くんはがばっと背もたれに腕を回して、うっとり顔を近づけてくる。「もしかして、俺が何もしないから?」うっ。「!はあ……アンタ、可愛すぎ……」太腿の上でぎゅっと握っていた手をほどくように、ゆっくりと指を絡める真澄くん。「してあげる、キスでもなんでも。嫌って言っても、やめてあげない」熱に浮かされたような呟きと共に重ねられる唇。たっぷりの愛情とぞっとするほどの執着を感じる熱いキスでした。

綴の場合 談話室でふたりきり。大体いつもコーヒーを飲みながらまったり過ごしてしまうので少し仕掛けてみよう……と思わせぶりにぴったり寄り添って座ってみる。「どうしたんですか」と茶化すような声色、だけど見上げれば照れたような顔。なんとなく、とじっと見つめてみると、耐え切れなくなった綴くんの方が「ちょっと待って」と目をそらして深呼吸しはじめる。くすくす笑っていると、ふいに感じる視線。あれ。「もしかして、からかってます?」ううん、と首を振るけれど疑うような視線でじりじりと迫ってくる綴くん。その気になってくれた、というより挑発しすぎたかも。怒った?と首を傾げればさらに眉を寄せて綴くんは唇を噛む。「怒って……ない。けど、ちょっと油断しすぎ」手首を捕えられて、あっという間に重なる唇。強い力、だけど優しく離れていく温度に茫然としていると、頬を赤らめた綴くんが手のひらに頬を摺り寄せて「……我慢してるんすよ」俺だって、とぼそり。底知れない欲望を感じるキスでした。

至の場合 談話室でふたりきり。相変わらずゲームに夢中の至さんはハイスコアを出せた、と嬉しそうにしている。隣にわたしいるんですよ?ふたりですよ?……思わずため息をこぼして恨めしく覗き見る。ねえ至さん。「ん、ちょい待ちー」まあ、こういうのも慣れたけど。「はい終わり。次は監督さんタイムね。選択肢どーぞ」ゲームのボタンを押すみたいに頬をツンと突いてくる至さんに、もうどうにでもなれ、と人差し指をつき立てる。いち、手をつなぐ。に、ハグする。さん、キスする。どれにする?「何それ勝ちゲーじゃん。いいの?」頷けば至さんはぱっと手を取って、自分の方に引き寄せる。「じゃあ全部」胸に飛び込む体勢になってそのままぎゅうっと抱きしめられ、顔を上げればキスが降ってくる。ずるい、チートだ!「まあ、こんなバグもありでしょ」ね?と背中をさわさわ、スルリとお尻まで撫でて耳にキス。「よん、はないの?」と囁かれゲーマーの怖さを知る。軽いタッチで溶けるように甘いキスでした。

シトロンの場合 談話室でふたりきり。皆と一緒にいるときとはちょっとだけ雰囲気が変わるシトロンくんのギャップにはいつも驚かされる。穏やかで大人っぽくって、振舞いは不思議なくらい高貴で。コーヒーを飲む姿に見とれているとふと目が合って微笑まれる。「どうしたネ、カントク?」喋ればエセ外国人だけど、それはそれで身近で嬉しくも感じられる。なんでもない、と返すけれど本当は期待してる。ああでも今、乾燥してるかも……と自分の唇に触れたとき、ふとシトロンくんが覗き込んできた。「唇がどうかしたノ?」あ、え、えっと。宙に浮いていた手を捕まえて包みながら、シトロンくんはずっとこっちを見つめてる。素直に言えってこと?甘いまなざしに耐えられず、自分から少し身体を近寄せて、ねえ、と唇を開いた瞬間――顎に手を添えて上向けられ、チュッと音を立ててキスをされた。「……ごめんネ、少し意地悪したヨ。カントクが可愛いから」情熱的なのはお国柄?王子様の戯れのようなキスでした。





天馬の場合 談話室でふたりきり。弾んでいた話がふと途切れて、天馬くんが沈黙を意識してぎこちなくなっているのが伝わってくる。たまには甘えてみようかな、と思わせぶりな視線で見つめると、複雑そうな瞳で見つめ返される。二人きりだよ?と呟けばぐっと息を呑みこんで、天馬くんは顔を隠すように片手で覆う。「あのなあ」談話室だから、って真面目に断られちゃうかな、なんて思っていると。「……誘ったのは監督だからな」低い声色にはっと顔を上げると、天馬くんは伸ばした指で髪を耳にかけ、するっと頬を撫でてそのまま唇を重ねた。余韻を残しながら離れて、熱っぽい瞳でじっとこちらを見やっている。「……したかったんだろ?」キス。有無を言わさずもう一度、二度。珍しく積極的な天馬くんにドキドキ。ドラマのワンシーンみたい、とこぼせば少し照れくさそうに目をそらして「頑張ってんだから言うな」、思いのほか等身大の言葉が返されて胸がきゅん。天然?天才?ドラマティックなキスでした。

幸の場合(年齢操作ver) 談話室でふたりきり。隣に並ぶと、幸くんが今はもう身長も追い越されて、すっかり男のひとに成長していることを思い知らされる。手首や腕、脚の長さ……骨っぽくすらっとしていてきれいだなあ。役や衣装のことを照らして考えているとふと目が合う。何を言うでもなく首を傾げる幸くんに甘えたくなって、その肩にコテンと頭を預けてみた。「なに」ううん、別に。「甘えたくなったの?」伸びてきた指に鼻をつままれる。苦しい。じゃれ合っているうちにソファに押し倒すような体勢になって、気づけばニヤニヤと見上げられている。「どうしたの、おねーさん」幸くん、大きくなって少し意地悪になった……。後ろ頭を撫でられて、誘ってるんだか誘われてるんだか分からない。じれったくなってかろうじて呟いた、キスしよ、の一言ににっこり笑った幸くんが、そのまま身体を抱き寄せてちゅっとキスをした。「よくできました」主導権取られっぱなし、魔性の年下のいたずらなキスでした。

椋の場合(年齢操作ver) 談話室でふたりきり。少女漫画の新刊を読み終わってホクホク顔の椋くんは自分の身体をがばっと抱いて、結末の展開に悶えている。イケメンに成長してもこの辺は変わってないな、と微笑ましく思いながら横顔を眺めていると、椋くんはぱっとこちらを向いて目をキラキラさせながら感想を語ってくれた。うんうん、楽しそうで何より。語りつくした頃にハッとして「ご、ごめんなさい僕、うるさかったですよねゴミ以下ですよね」とシュンとする椋くんに、そんなことないよ、と頬をぺちぺち叩くと手のひらに顔を摺り寄せて、子犬みたいな瞳で見つめられる。可愛い、なんだか悪いことしてるみたい。じっと見つめて顔を近寄せてみると、椋くんは雰囲気を察して、頬を染めて微笑んだ。「監督さん……キス、してもいいですか?」したいです、と。両手首を捕まえられる。意外と力が強い。押しも強い。頷いた瞬間には重なる唇。少女漫画のヒロイン気分を味わえる?ロマンティックなキスでした。

三角の場合 談話室でふたりきり。三角くんと過ごすときはいつも三角のモチーフを身に着けるようにしているのを、三角くんは知っているからいつも三角探しが始まる。今日も気づいてくれるかな?ドキドキしながら隣に座ると、いきなり腕を引かれてバランスを崩す。「あれ〜?今日、さんかくは?」ふふ、どこでしょう?じいっとこちらを見下ろす瞳はキラキラしてる、けど、心の奥まで見透かされるようでぞくっとしてしまう。「あ」、冷たい指先がする、と服の中にしまっていたネックレスを手繰り寄せた。「見つけた〜」自然と距離が近づいて、鼻先が触れてしまいそうだ。いつもなら照れて顔をそらしてしまうけれど、負けじと見つめ返してみる。キスしたいな……と思ったその瞬間、ぱくっと噛みつかれるように唇を奪われた。キスの間も三角くんはばっちり目を開けてこっちを見てる。「へへ。カントクさんの唇、食べてって言ってたよ」艶っぽく舌をぺろり。無邪気な子供のような、獰猛なケモノのような。底知れないキスでした。

一成の場合 談話室でふたりきり。気遣い上手で空気の読める一成くんは雰囲気づくりも自然で、ふたりのときはいつもナチュラルで甘いムードを作ってくれる。たまには自分から積極的になってみようかな、と思い立ち、膝の上に置いてあった一成くんの手に触れてみた。「ん?どしたの?」指をするっと絡めて撫でられる。あ、一成くんにまたリードされてる……。少し身を乗り出して、恥ずかしさをこらえて唇を突き出してみる。一成くんは一瞬ぽかんとしたかと思えば、ぷはっと噴き出してそのままがばっと抱きしめられてしまった。「監督ちゃん、それ反則。マジ可愛すぎ!」うまくいったような、いってないような。羞恥心がこみ上げて、一成くんの胸に顔を埋めると、くすぐるように頬を両手で包まれた。「ね、顔上げて。キスしたい」ダメ?と額をくっつけて逆におねだりされてしまえば、断れるはずもない。顔を上げると幸せそうに笑った一成くんが「大好き」と囁いて甘いキスをくれた。リア充なキスでした。





万里の場合 談話室でふたりきり。年下だけどスマートな万里くんは、こういうときはいつも触れ合う距離にいてくれる。たまには年上らしくリードしたい、なんて思ってトライするけれどうまくいかない。「なーにそわそわしてんの」ふたりきりでドキドキしてる?なんて、万里くんは余裕たっぷりに笑ってる。悔しいからその頬を両手で包んでぐっと近寄せる。面食らった万里くんの顔、珍しい。キスして、と呟けば万里くんの頬はかあっと赤くなって、「……くそ、」苦し紛れの悪態にしてやったり、つい笑みをこぼせばそのまま腰の辺りをぎゅっと抱き寄せられた。「ずりーぜ」なにが?「可愛い、って言ってんの」首の辺りにすり、と鼻先を摺り寄せてちゅっとキス。目が合えば、いつも通り自信に溢れた瞳が細められる。「ここじゃないって?」主導権、握ったつもりでまだ握れてないらしい。眉を顰めれば万里くんはくすくす笑って「わーったよ、機嫌直して」ようやく唇にキスがたどり着く。意地悪で駆け引き上手なキスでした。

十座の場合 談話室でふたりきり。甘い雰囲気にはまだ慣れてないけど少しずつ恋人らしくなってきた、気もする。ケーキを食べ終わって満足げな十座くんの隣に座ると、自然な仕草で傍に寄せられる。美味しかった?と聞けば「っす」と嬉しそうにに頷く。やっぱり素直で可愛いなあ。見つめれば目が合って、なんとなく良い雰囲気に。いつも十座くんから言ってくれるから、今日くらいは素直になろう……と少し身を乗り出すと、十座くんは「?どうした?」とぴんと来てない様子。むむ。あ、あのね……。顔を近づけてみるけれどなかなか伝わらない。ええい、どうにでもなれ!キスしたい、と呟いた声はしゅんと萎んで羞恥心に変わっていく。うつむいていると、ふっと笑う声が聞こえてきた。「……もっかい聞きたい」む、無理!顔を覆えば、逞しい腕の中にぎゅっと抱きしめられる。「監督、こっち見ろ」十座くんは幸せそうに目を細めて唇を重ねる。不器用同士、少しずつ深まってゆく甘いキスでした。

太一の場合 談話室でふたりきり。最初は弾んでいた話もふと途絶え、ふとぎこちない沈黙が訪れる。太一くんが意識してくれているのがひしひしと感じられて、可愛いなあ、とお姉さん目線……になるけれど、少し意地悪してみたくもなる。思わせぶりに近づいてふと見つめてみる。「ひゃ、」子犬みたいな声を上げる太一くん。どうしたの、なんてわざとらしく覗き込めば、赤い頬でこっちを向いた。「なんでもないッス……」思わず笑ってしまうと、太一くんは鼻先を隠すように手で顔を覆う。「っ……監督先生、わざとッスか?」俺、その気になっちゃうよ。ソファに置いていた手をぎゅっと掴まれて距離が縮まる。ドキドキしている心音まで聞こえてきそう。「監督先生……キス、したい」意地悪しよう、と思ったのにこっちが緊張してきてしまった。頷けば重なる唇、離れて、もう一度。骨ばった手が頬に触れてぞくっとする。熱を帯びた視線から伝わってくる想い。まだ拙いけれど、想いの溢れる青いキスでした。

臣の場合 談話室でふたりきり。年下だけど、臣くんは包容力があるから全然そんな感じがしないどころか、いつもリードしてくれるから甘えてしまっている。たまには臣くんを甘えさせてあげるくらいの余裕を見せなきゃ。ソファの隣に座ると、腰の辺りに腕を回して自然と近寄せてくれる臣くん。ふと顔を見上げれば「ん?」と首を傾げられて、相変わらずペース掴まれっぱなし。ここはひとつ積極的になってみよう、とその胸に飛び込んでみると、「ははっ。監督、猫みたいだな」と頭を撫でられる。あれ、結局わたしが可愛がられてるのでは?……身体を起こして、今度は顔を近づけてみる。じっとねだるように見つめるけれど、臣くんはにこにこ笑うだけ。「どうしたんだ、監督?」えっと、その。「もしかして、」はっと顔を上げると、気が付けばソファに押し倒されている。あれ。「誘ってる?」その通り……だけど、思ってたのとなんか違う!息つく暇もなくキスをされあっという間に彼のペース。甘やかされっぱなしのキスでした。

左京の場合 談話室でふたりきり。隣いいですか、と聞けばふっと噴き出して「今更聞くことか?」と笑いながら手招きしてくれた。今日の左京さんはのんびりモード、久しぶりのふたりの時間を大切にしてくれているらしい。頭をもたげると「重い」と言われてしまったけれど、跳ね除けたりはしない。嬉しくてもっと甘えてみたくなり、左京さん左京さん、と呼んでいると「なんだよ。うるせえ」と言葉よりずっと優しい声色が飛んでくる。ついでにおねだりしてもいいかな?ちらっと見上げると眼鏡越しの切れ長の瞳と視線が重なってドキリ。あの、折角ふたりきりなので、その。もじもじしていると察したらしい左京さんは、片手で頬をむにっと掴んできた。「もっと色っぽく誘ってみろ」む、むぐ。「中学生のガキかよ?」なんて意地悪なことを言いつつも、幸せそうな優しい瞳で笑ってる。だって……。つい尖らせた唇を、啄むように唇でふさぐ左京さん。「怒るな」、ちゃんと可愛いと思ってる。大人の色気でとろけさせるキスでした。





紬の場合 談話室でふたりきり。一緒にいてもなかなか甘い雰囲気にならないのは、紬さんのどこか儚げで透明感のある雰囲気のせい。たまには自分から積極的にならないと、折角のふたりなのにイチャイチャできない!隣に並んでソファに座りながら悶々と考えていると、「どうかしました?あっ俺、コーヒーのおかわり淹れてきますね」なんて斜め上の気遣いをしてくれる紬さん。立ち上がってキッチンに向かいそうな腕を引き止めて、もう一度隣に座らせる。「あ、あの……?」キョトンとしてる紬さんをじっと見つめる。紬さん、今、ふたりきりなんですよ。貴重な時間なんですよ!もっと、こう……。思い切って言ってから、お互いにどんどん頬が赤くなってゆく。「そう、ですよね、カントクさんの言う通りです」引かれるかな、なんて思ってうつむいていた頬をそっと両手で包んで、紬さんは顔を近寄せる。「顔……上げてくれませんか?」優しいまなざしに見つめられ、そっと触れる唇。不器用で穏やかなキスでした。

丞の場合 談話室でふたりきり。丞さんとは基本的に芝居の話ばっかりで、たまのこういう時間も気が付けばあっという間に終わってしまったりする。折角のチャンス、有効に使わないと。意気込んで隣に座って早々、冬組の次回公演について切り出されつい盛り上がってしまう。って違う、そうじゃない!意を決して押し黙り、丞さんにじっと向かい合う。目で訴える、雰囲気で察してもらう、みたいなことより直球をぶつけた方が効果的だ。丞さん、あの……わたし。思い切って、キスしたいです!くらいのことを言おうと思っていたけれど、顔を上げれば目の前で丞さんがおかしそうに喉を鳴らして笑ってる。「っ……悪い。あんまり必死な顔、してるから」も、もしかしてバレバレだった?恥ずかしくって顔を覆えば、そっと手を剥がされる。「見せて」だめ、今赤くなってるから!「別にいいだろ」可愛いんだし、って呟いたかと思えば抱き寄せられ、そのまま唇を塞がれた。無骨だからこそまっすぐで甘い。委ねてしまいたくなるキスでした。

密の場合 談話室でふたりきり。いつも通り膝枕で寝るのかな、と思っていたら珍しく起きている密さん。嬉しく思ったのもつかの間、すぐに肩にもたれかかってきて寝息を立て始める。別にいいけど、少し物足りない……。仕方ないなあ、なんて呟いた声が我ながら寂しげに響いた。密さんは寝てるから聞こえてないはず。ソファの上に並ぶ、重なりそうで重ならない手の甲を眺めて、一緒に寝てしまおうかとため息をつく。すると、おもむろに密さんの手が動いた。手をぎゅっと掴まれて、思わず見上げると、ばっちり覚醒している瞳と目が合う。密さん、起きて――開いた唇が一瞬でふさがれた。長いキスの後、ソファに押し倒される体勢のまま肩で息をする。ちょ、ちょっと待ってください。いきなり!相変わらず感情の読み取れない、澄んだ瞳がこちらを見下ろしている。「……寂しそうだったから」べ、別にそんな……。「だめ。もっと、キスしたい」手、どけて。いつだって唐突。奪うような切ないキスでした。

誉の場合 談話室でふたりきり。「詩興が湧いてきた!」と、またよく分からない詩をそらんじ始めたかと思えば、満足げに詠み切って「どうだね?」と意見を求めてくる誉さん。うん、まあ、素敵です……と適当に答えたけれどどうやら喜んでくれたらしい。「さて、次は監督くんの言葉を聞くとしようか」……ん?なんだか話が妙な方向に。ソファの背もたれに腕を回し、誉さんは間近で覗き込んでくる。「その口が何か言いたげだから」っ!「さあ、言ってごらん」長い指で唇に触れられて、つい目をそらしてしまう。もっと傍にいたい、キスしたい、って思ったのがばれてた?誉さんの手を掴むと、指を絡めてすっと引き寄せられる。「キミは素直じゃないね」柔らかく微笑んで、唇にそっとキスが落とされた。「……瞳の方がよっぽど雄弁だ」頬をくすぐる、誉さんの指先は冷たい。まっすぐで甘ったるいまなざしに吸い込まれそうになる。いつだってあっという間に彼のペースに飲み込まれている、大人な誘惑のキスでした。

東の場合 談話室でふたりきり。隣り合って座っているだけで、甘い雰囲気を醸し出してくる魔性の東さん。すっと近寄ってみれば頭をこつんと傾けて、東さんは受け入れてくれる。「なあに」艶っぽい声、ドキドキしているうちに手まで絡めとられている。なんでもないです……と呟けば東さんはふっと笑って、重なった手をきゅっと握った。「そう?」ああ、じれったい。見上げるとすぐに目が合う。「でも、嘘は良くないな」ひそめるような声にぎくりとして、開いた唇に東さんの人差し指が触れた。「本当は」っ、「キス、したい……」東さんは自分の人差し指にキスをした。「なんて思ってるんじゃない?」煽られてるのは十分、分かってる。くすくす笑う東さんを、まっすぐに見つめてその頬を捕える。我ながら拙いキス。驚いた顔に、思ってます、と告げれば彼は愛おしそうに笑って、甘く優しい口づけで応えてくれた。いじめてごめんね?どこか危険な駆け引きの匂いがする。艶めいた魅惑のキスでした。




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