ちゃんは本当にかわいい。ぎゅってしてチュってしてずっと離したくなくなるくらい俺はちゃんにメロメロ。今どきメロメロなんていう人は俺くらいだなって思うけどほんとうにそのくらいちゃんがすきだ。女の子らしくてかわいくて、責任感がつよくてなんでもできる優等生のちゃん。だけどちょっと抜けてるところがあって、そういう完璧じゃないところにぐっとくるっていうか、なんでも諦めないでがんばろうとする健気なところに俺はとてつもなくきゅんときて気がつけばちゃんのことがすきになっていた。生まれて始めてこんなふうに誰かを強くすきだと思った。それ以来ずっとアピールしてアプローチして何回も何回も告白してるんだけどその思いはいまいち伝わりきっていないらしい。ちゃんはつれない。しかも最初に告白したとき「ぶんたくんのことまだよく知らないから。」ってふられて、つきあってから俺を知ってよって言ったら「そんな適当なことできない!」って本気でおこられた。そんなこと言われたのはじめてで、真面目なちゃんは俺のきもちをちゃんと考えようとしてくれてるみたいだったから結果として俺はさらにちゃんがすきになってしまった。だからそれからもめげずに毎日アプローチ。ちゃんは呆れてるみたいだけど嫌がってはいない(と思う)。なにより「おはようぶんたくん。」って挨拶しかえしてくれるのが俺はいちばんうれしい!だから明日も、ちゃんのえがおを見るためにがんばってチコクしないで学校に行く。ああ、はやく明日になれ。頭の中でシミュレーションしてみる。おはようちゃん、今日もかわいいね、俺とつきあって。胸がどきどきしてきた。いつになったらちゃんはうんって言ってくれるんだろう。最近はまえよりよく笑ってくれるし、もしかしたら完全に叶わないってわけじゃないのかもしんない。ヤバイうれしすぎる。そうだといいな。いや、そうする。絶対そうしてみせる。俺のミリョクをいつかちゃんは分かってくれるとおもう。なんせ俺って天才的だし?!




loving you (100517)























「おはようちゃん!」
「おはよう、ぶんたくん。」
「あのさ、今度の土曜日ヒマ?」
「え? うーん、多分ヒマだよ。」
「実は試合があるんだけどさー、見にきてくんないかなーって。」
「ああ、高体連?」
「そうそう!俺、ちゃんが来てくれたら、ちょうがんばれるんだけど。」
「……じゃあ友だちつれて観にいこうかな?」
「う、うん!(ヨッシャ!!)」

・ ・ ・

「あの手ふってるのって丸井くんじゃない?」
「あ、ほんとだ。」
「こっち見てるから、に手振ってるんだとおもうけど……。」
「えー、いやいやそんなことは。」
「絶対あるって。振りかえしてあげなよ。ほらめっちゃ嬉しそうな顔してるじゃん。」
「う、うん……(じゃあちょっとだけ)」

・ ・ ・

「アッ!! ちゃんが手振り返してくれたヤベー! 俺やべー!! 世界一の幸せ者!!! 今日ぜってー勝てる!!」
「う、うるさいっスよぶんた先輩背中叩かないでくださいよ!」
「あーもーめっちゃにやける。ほらみてあれが俺のちゃん。かわいいだろぃ。おまえにはやらねーぞ!!」
「(うぜー!)ハイハイかわいっすねー……あ、ホントにかわいい。俺好みかも。」
「はあ?! や、やめろよそういうこと言うの? おれのだから! 手出すなよ!」
「べっつにぶんた先輩のものじゃないっしょ。ふーん、せんぱいっていうのかあ〜。」
「おっ、おめーいい加減にしろよコラッ! 先輩のゆうこときけねーのかこのワカメ!」
「いってぇ! あーウザッいて、いててて、ちょっ試合前なんすからプロレス技かけんのまじやめて!」

・ ・ ・

「ふふ、ぶんたと赤也は元気だね。仁王はまざってこなくていいの?」
「‘ちゃん’絡みのぶんたはしつこいからいやじゃ。」
「たしかにね。ねえ、その‘ちゃん’ってどの子?見に来てるらしいけど。」
「ぶんたがしつこく誘ったらしいのう。えっと……あの2人組の、ちっこいほう。」
「ふうん? なんだか従順そうな子だね。」
「幸村。」
「あ、間違った。純粋そうな子のいいまちがい。」
「…………そうか。」
「可愛らしい子じゃないか。十分ぶんたが好きになりそうな子だと思うよ。」
「じゃろ。まあでも、これがなかなか面白い子なんじゃ。」
「へえ?」
「意外とよくわらうし、すぐ赤くなる。からかい甲斐のある奴じゃ。」
「(あれ、仁王もしかして?)」
「? ……何じゃ。」
「べつにー。あ、見て、赤也が半べそかいてるよ。あはは!」
「ほんま。ああ、そろそろ参謀が出てくる頃合じゃな。」

・ ・ ・

「なんで俺まで叱られるかまじいみわかんないっすよ。」
「そんなのちゃんをいやらしい目で見た罰にきまってんだろぃ。」
「はーーっ!? やめてくださいよぶんた先輩じゃあるまいし!!」
「バーカ俺が持ってるのは純粋な恋心だ!!!」

「ふたりともうるさい、精市がこっちを見てるぞ。」
「「ゲッ!!」」




slow start (100804)























「ぶんた先輩! 漢文の辞書とか持ってません?! 次の授業で使うのおれ忘れてて!」
「はあ? 漢文の辞書とかそんなマニアックなもん持ってねーよ。」
「えええーー頼みの綱だったのに! 仁王先輩は? 持ってないっスか?!」
「残念、持っちょらん。」
「ゲーー! 完全おれ死んだーー!!」
「確実に持ってそうなのは真田、柳、柳生あたりじゃねえの?」
「はあっ? バカ言わないでくださいよ! どうやって借りろっていうんすか。」
「(バカだと?)あとはしらねー。」
「その3人はもれなくお説教つきじゃろうな。俺なら借りん。」
「あーもーどうしよー!! 補習になりでもしたら部活にでれなくなるっ!!」

「わっびっくりした、こんな入り口で。」
「!!! ちゃん!!!」
「通行のジャマじゃな。そこ退きんしゃい赤也。」
「ういーっす。(このひとが例の‘ちゃん’か。近くでみんのはじめてだな。)」
ちゃんごめんね、こいつは俺がしっかり怒っておくから!」
「う、うん、でも全然だいじょうぶだから気にしないで。」
「このワカメ赤也!! 人にっつーかちゃんに迷惑かけるなよなおまえ!」
「はあ。(‘ちゃん’の前だからってチョウシに乗りやがってこのひとは。)」
「聞いてんのかワカメ!」
「だーもうっ、分かったからやめてくださいよ! ワカメワカメって俺が変な印象になるでしょ!」
「事実なんだからしょーがねーだろ。っていうかちゃんに近づこうとすんなよ。」
「たぶん、赤也は名乗るまでただの‘ワカメな後輩’じゃ。」
「ゲッ! まじ勘弁っスよそんなの。俺、切原赤也っスから。よろしく先輩!」
「あ、よろしく、です。(切原くん有名だし、知ってたけど。)」
ちゃん別にソイツとよろしくしなくていいからね!!」

「あっそうだ先輩、漢文の辞書とか持ってたりしません?」
「漢文の辞書? あ、たぶんロッカーにはいってるよ。」
「ま、まじすか?! ちょっ次の時間借りてもいいっスか? ていうかお願いします!!」
「いいよ。じゃあロッカーにあるから、取りにいこ。」
「やったーー!!! ほんと感謝っス!!」

「えっちょっとまって何ナチュラルにちゃんに借りる流れになってんの?」
「赤也は世渡り上手やのう。俺でも真似できん。」
「しかも‘おいで’みたいなこと言われてなかった?! おれもまだ言われたことないのに!!」
「(ただの幻聴じゃ。)」

・ ・ ・

「はい、漢文の辞書!」
「ありがとうございます! 先輩。今度なんかお礼しますから!」
「ううん、気にしないで。返すのもいつでもいいよ。」
「(……ヤッベ。このひとほんとに好みかも。すげーかわいい。)」
「切原くん?」
「(優しいし、ぶんた先輩が惚れるのもわかるっていうか……。)」
「……そろそろチャイムなるよ? 聞いてる?」
「!! あっ、そうっすね! 俺もう戻るっス! またあとで返しにきますから!」
「あ、うん、じゃあね!」

「(ぶんた先輩に先輩はちょっともったいないっスよね〜、おれまじで狙っちゃおうかな!)」
「(赤也にははらたつけど朝からちゃんと話できたしおれ幸せかもしんない。やばい。)」
「(また面白いことになりそうじゃな。もかわいそうに。)」




coming storm (100919)























「やあ、ちゃんじゃないか。」
「!? ゆ、幸村くん!?」
「ああごめん、ぶんたがいつも君のことを話すから、ついおれも知り合いのような感じがしてて。」
「あっ、ぜんぜんいいよ。ちょっとびっくりしただけだから。」
「‘ちゃん’のほうが耳に馴染んでいるし……そう呼んでもいいかな?」
「そ、それは、おまかせします。」
「ありがとう。じゃあ遠慮なくそうさせてもらうよ。」

「ちなみにおれたち、話をするのは初めてだっけ?」
「えーっと、たぶんそうかな。」
「そっかあ。なんだかぜんぜんそんな気がしないな。」
「……ぶんたくんはそんなに、部活でもわたしの話をしてるの?」
「ふふ。君がいないぶん、君の前にいるときよりすごいかもしれないよ。」
「ほ、ほんと?! もう、やめてって言ってるのに。恥ずかしいなあ……。」
「(と言うわりには、なんとなく嬉しそうだけどね。)」
「(ものすごく美化表現されてるだろうから、テニス部の人に会うのふつうに恥ずかしいな。)」

「ところで、君とぶんたは一体どういう関係なんだい?」
「えええっ!?!? い、い、いやその、べつに……。これといって。」
「へえ、そっか? ふふっ……説得力ないね。真っ赤だよ?」
「えっわ、わたしすぐ赤くなっちゃうの、体質で……。」
「かわいいね、林檎みたいだ。ぶんたは君のそんな純粋なところを好きになったのかもね。」
「(かわいい?!) えっ……あ、あの、幸村くん?」
「ああごめんね、なんでもない。じゃあ俺はこれで。」

・ ・ ・

ちゃーーーーーん!! い、いま幸村くんと話してなかった?!」
「わっぶんたくん! うん、話してたよ。声かけられたの。」
「ま、まじでかーー!!(ちょうこえええ)」
「それで聞いたんだけどね! ぶんたくん、あんまりテニス部でわたしの話しないでよ!」
「え? 幸村くんなんか言ってた?」
「言ってたよ! もう、わたしが恥ずかしいんだから!」
「(ちゃんに怒られた!!)う、うん……。」
「……わ、わたしのこと可愛いとか思ってくれるの、絶対ぶんたくんだけなんだよ?」
「え。(ちゃん照れてる? なんで? えっもしかしてこれいい雰囲気じゃね?)」
「だからもうやめてよね! ……って、ぶんたくん、聞いてる?」
「あっ、ああ! はい! わかりましたっ!!」
「分かってくれたら、いいの。じゃあわたし行くね。」

「………………」

ちゃん!」
「え……? ぶんたくん?」
「ごめん俺、やっぱり約束まもれねーかも。いま改めて思ったけど、俺、ちゃんのことがすっげー好きだ! だからみんなに自慢したくてしょうがないんだ。俺の好きな人はこんなにかわいいんだぞって!!」
「?! えっ、ええっ!!」
「だめかな、いや、だめって言われたって俺やめれないと思う。ちゃんすっげー可愛いんだもん! ずるい! 反則! おれどきどきすんじゃん! 彼女になってくんないかなとか、抱きしめたいとかチューしたいとか独り占めしたいとかって俺いっつも思ってるよ!!」
「ぶ……! ぶんたくん、こっこんなところで……?!」
「場所なんて関係ねーよ! 俺はいつでもどこでもちゃんのことが大好きだ!!!!!」
「!!」

・ ・ ・

「ヒュー。恥ずかしいやつじゃのう、丸井。」
「あの告白が周辺の教室中に響いている確率100%だ。」
「俺には真似できそうにないぜ……。」
「ラテンの血が流れてる男にここまで言わせる丸井はツワモノじゃな。」

・ ・ ・

「なんか今日ぶんた先輩が相当すごい告白したって女子から聞いたんすけど。」
「はあ? 俺が? だれに?」
先輩にきまってるじゃないすか!!! 一体どんな告白したんすか。」
「えー告白なんていっつもしてるからどれのこと言ってんのかわかんねーよ。」
「ごまかさないでくださいよー! なんかめっちゃすごかったって言ってたんすよ!女子が!」
「ごまかしてねーし! 俺なんかしたっけ。しらねーよ。」
「なーーんで教えてくんないんすかあ! ぶんた先輩のケチ!!」

「丸井がにものすごく迫っているという自覚がない確率87%……と。」
「そんなこと書いてどうするんじゃ参謀。」
「さあな。でも何かに使えそうだろう。」
「…………ピヨッ。」




rainbow days (101004)























先輩! 5限目体育なんスか? ジャージ着てんのはじめて見た!」
「あ、赤也くんだ。なにしてたの、サッカー?」
「そうサッカー。俺ってば上手いからさー、何やってもエースなんスよねえ。」
「(ぶっ)そっかあ……。赤也くんってなんか、かわいいね。」
「はっ?! え、びっくりした、なんで。」
「いや、なんとなく……元気いっぱいでいいなと思って。」
「別にかわいいとかって言われても、男としては微妙っスよ?」
「えー、そういうものかな?」
「そうですって! それに、かわいいっていうのは――」
「?」
「せ……先輩みた「あ!!!! ちゃーーーーーん!!!!!」

「わーなに!! ぶんたくん!」
「あっジャージ着てるし、やべーかわいい! 髪二つ結びもまじいいよ!!」
「あ、ありがとう。」
「もーまじホンットぶんた先輩とか空気よんでくださいよーまじないわー。」
「ハ? 聞こえねーな。おまえこそ何さりげなくちゃんと会話してんの腹立つんだけど。ワカメはとっとと海に帰れば。」
「ぶんたくん、口がわるいよ!」
「わわわ、ごめんちゃん! 俺つい興奮しちゃって。」
「もう、赤也くんはかわいいかわいい後輩なんだから、大事にしなくちゃだめだよ!」
「う、うん……きおつける。(か、かわいい? 赤也が?)」
「(へへっざまみろ!)まあ、分かれば別にいーっスよ〜ぶんたせ・ん・ぱ・い!」
「……!!(くっそはらたつこのわかめ!!)」

「ああ、こんなところにいたのか、。」
「柳くん!」
「この書類に目を通しておいてもらおうと思ってな。」
「わざわざごめんね、ありがとう。読んでおくね!」
「は? 柳? なんで? ちゃんに何の用? なんで? なんで柳?」
「(プッ、ぶんた先輩すげーてんぱってる、まじうける)」
「何って、単なる生徒会の用事だが。」
「いやだから、なんでちゃんと生徒会が――、」
「あれ? 言ってなかったっけ。わたしね、生徒会の補佐員を頼まれたんだ。」

「へえーー! そうなんすか。先輩ってそういうの得意そうっスもんねえ。」
「ああ、俺が推薦したんだ。補佐員には是非を、とな。」
「買いかぶりすぎだよーって言ったんだけどね。」
「そんなことはないぞ? 現にものすごく助かっている。」
「そ、そうかな? えへへ、ありがとう。」

「……!(ちゃんが照れてわらってる、俺にはそんな顔見せてくれたことないのに!)」
「ぶんた先輩邪魔っすよ。ところで、柳サンと先輩っていつから面識あったんすか?」
「1年の時に同じクラスだったんだ。」
「一緒に書記委員やったりしてたから、そのよしみかな。」

・ ・ ・

「ねーぶんた先輩、ほんとにしらなかったんすかー?」
「なにを。」
「柳サンと先輩が仲いいってコト。」
「……だって俺がちゃんと出逢ったのは3年になってからだし。」
「へえ? なんか意外。もっと前からかと思ってましたよ。」
「そう考えたら柳は俺なんかよりもっとちゃんのこと知ってんのかな……、なんかそういうの、すっげー落ち込むわ。」
「(ふーん…………)」
「何だよ。」
「いや……ぶんた先輩って案外、まじで、先輩のこと好きなんすね。」
「何いってんのおまえ。当たり前だろ。」

・ ・ ・

「ところで、質問があるんだが。」
「え? なに?」
は丸井のことをどう思っているんだ。」
「へっ!? えっ、ぶ、ぶんたくんのこと!?」
「これだけ告白されてるが、まだ1度目しかはっきりと返事はしていない。違うか?」
「そ、そうだけど……、なっなんで柳くんが知ってるの!」
「7割は勘だったんだが、やはりそうか。」
「ひっどい! カマかけたんだ柳くん?! ぶんたくんのこと、ど、どう思ってるかって、言われても……。」
「(の顔が赤い。これは十中八九――。)わかった、もう聞かない。すまないな。」
「え! ちょっ、や、柳くん! 何その笑顔! も、もー、やめてよー!!」




new emotion(101103)























「わっ仁王くん、どうしたのこんなところで。」
「……良いところに来たのう。お前さん今暇か。」
「これから生徒会室に行くところだけど……暇といえば暇だよ。」
「ふうん、まあ丁度いいタイミングじゃな。。俺について来んしゃい。」
「えっ!? どこに?」

・ ・ ・

「ぶんたが柳に喧嘩ふっかけて、大変なことになってのう。散々じゃったから逃げてきたんじゃ。」
「な……何それ!? なんで? なんで柳くんとぶんたくんが!?」
「当然お前さん絡みに決まっとるじゃろ。しっかり責任取りんしゃい。」
「わ、わたし? だけど喧嘩って……!」
「とりあえず、なんとか出来るのはお前さんしかおらんのじゃ。頼む。」
「うん、わかったけど……!(ぶんたくんどうしたんだろう、心配だな)」

・ ・ ・

「あっ、仁王先輩かえってきた……と、先輩も一緒だ!」
「切原くん、ぶんたくんと柳くんが喧嘩したって聞いて、わたし……。」
「ああそれで……ぶんた先輩ならあっちにいるけど、いまは――」
ちゃん。わざわざ来てくれたんだね。」
「(びっくりした)ゆ、幸村くん。おじゃましてます。」
「ぶんたはあそこにいるけど、今は会わない方がいいんじゃないかな。」
「え? どうして?」
「ひどく気が立ってるみたいだから。まあ君相手なら、違うのかもしれないけどね。」
「あれですよ先輩! さわらぬ神にタタリなしってやつ!」
「ピヨ……そんなにひどくなっとったんか。それで、参謀は?」

「呼んだか。」
「柳くん! だっ、だいじょうぶなの?」
「ああ、平気だ。少し言い争っただけだからな。」
「わたしのことでって、一体どういうこと?」
「……そのことに関しては、俺ではなく本人から聞いたほうが良いだろう。」
「ふふ、そうだね。ぶんたに直接言わせなよ。」
「えっ? じゃ、じゃあわたしやっぱり今ぶんたくんと話してくる!」
「まじすか? 気をつけてくださいよ?先輩なら大丈夫だとは思うんすけど!」
「(ぶんたくんって怒ったりしたらそんなにこわいんだ……、ちょっと意外だったなあ。)」
「(いきなり襲ったりされても困るから、ちゃんと見張っててよ、2人とも。)」
「(ういーっす。)(ピヨ。)」

「まあ、俺も少し大人げなかったのかもしれないな。」
「構わないよ。良い薬だ。ぶんたには少し大人になってもらわないと、彼女にも迷惑がかかるだろ。」
「そう言うと思っていた。……さて、あとはぶんた次第というところか。」

・ ・ ・

「あれっ? 先輩もう戻ってきた!? ずいぶん早いっすね!」
「ぶんたは何て。」

「……会いたくないから、帰ってくれって。」

「えっ、まじでそんなこと言ったんすかぶんた先輩!? 先輩に!?」
「ぶんたもあれで不器用やしの。気にするな、。」
「うん、ありがとう。でも大丈夫だよ。」

「重症じゃな、あいつ。」
「そっスねえー。その間に俺が取っちゃいますよーって。」

「(……ぶんたくんにこんな風に冷たくされたの、初めてだなあ……。)」

・ ・ ・

「(あれ、なんか、かなしいかも。)」




stop sailing(101209)























「ああ、。おはよう。」
「柳くん……おはよう。」
「もうぶんたとは話せたのか。にまで噛み付いたと聞いたぞ。」
「噛み付いたって、そんなことないよ。たぶん少し機嫌が悪かっただけだよ。」
「じゃあ、まだ喧嘩の内容……というか、ぶんたの主張を聞いていないんだな。」

「主張?」
「ああ。実はあのとき、俺からお前の話をぶんたに持ちかけてみたんだ。」
「へ、へえ……?」
「すると案の定あいつはカッとなって、俺に食って掛かってきた。手こそは出さなかったがな。」
「えっ、柳くん、一体ぶんたくんになんて言ったの?」
「あまりに迷惑をかけるな、と言っただけだ。別に喧嘩をふっかけたわけじゃないぞ。」
「……そ、それだけ? それなのにあんな喧嘩に発展したんだ?」

「ぶんたは恐らく、俺に嫉妬をしていた。だからイライラしていたんだろう。」
「嫉妬……って、もしかしてわたしと委員会が一緒だから、とか?」
「そうだ。よく分かったな。」
「うそっ。たったそれだけで!?(ぶんたくん、赤ちゃんみたい!)」
「まあ、そう言ってやるな。ぶんたもぶんたで反省はしている。」
「ぶんたくんが反省だなんて、わたし聞いたことないけど……。」
「ふっ、それもそうだな。」

「それで、柳くんとぶんたくんは仲直りできたの?」
「もともと喧嘩、というわけじゃない。今はただぶんたが一人で落ち込んでいるだけだ。」
「お、落ち込んでるの? ぶんたくん……。」
を突き放すようなことを言ったのも、そのせいだろう。」
「う、うん……。(やっぱり心配、だけど……。)」

「会いに行ってやったらどうだ。。」
「え? ぶ、ぶんたくんに?」
「ああ。そろそろぶんたも、気持ちの整理がついた頃だろう。」
「で……でも。今はわたしともちゃんと話してくれるのか、わかんないし。」
「そんなに冷たくされるのが嫌なのか?」

「……そりゃあ、いやだよ。今までぶんたくんはずっと、優しく接してくれてたから。」

「そうか。じゃあ、尚更行くべきだろう。」
「えっ、どうしてそうなるの。」
「それは自分が一番分かっているんじゃないのか、?」
「…………柳くんって、たまにそういうところ、あるよねえ。」
「はは。何のことだか分からないな。」




want to see (110415)























「ぶんたくん。」
「…………ちゃん。」
「こんなところで、何してるの。」
「何もしてないよ。ただ、すわってただけ。」
「部活行かないの?」
「行く……けど、まだ、行かない。」

「柳くんと仲直りしたの。」
「悪いのはおれだから。ちゃんと謝ったよ。」
「そっか。えらいね、ぶんたくん。自分の非を認められるって、すごいことだよ。」
「そうかな。俺は、なんにも偉くないよ。」
「どうして?」
「だって、心狭いし、わがままだし。すぐ機嫌わるくして怒られるし。」
「怒られたの?」
「幸村くんに少し。」
「ふふ、そっか。なんか想像つくなあ。」
「そう?」
「幸村くんはいい部長さんだね。ちゃんと皆のこと見てるもん。」

「…………ちゃんは、幸村くんとか、柳とか、そういうさあ。」
「え?」
「大人っていうか、落ち着いてるっていうか、そういうやつのほうが、いいの。」
「ど、どうしたの。急に。」
「俺といるときよりも、ちゃん、なんかいっぱい笑ったりするし。好みなのかなって。」
「ぶんたくん……。」
「俺、ぜったいあんなふうにはなれねーから、だったらショック。」

「…………ぶんたくんもやっぱり、落ち込んだりするんだね。なんか変なかんじ。」
「え?」
「ふふ、でもぶんたくんが心配してるようなことは、たぶん全然ないよ。好みのタイプとか、そういうのは。」
「ほ、ほんとに? …………。」
「うん。ああ、でもぶんたくんの前と、柳くんの前とでは、やっぱり少しちがうかもしれない。」
「え……? どういう意味?」
「うーん、それは、まだ言えないかな。」
「? と、とりあえず、幸村くんとか柳がすきとかってことは、」
「ないよ。」
「そ、そっか! それは、よかった。まじでよかった。」

「でもそんなに弱気になってるの、初めてみた。暗い顔したぶんたくん。」
「そ、そりゃあ……ていうかちゃんのせいだよ。だいたい。」
「そうかな。」
「そうだよ。俺をこんなに惚れさせたちゃんがわるいよ。責任取ってよ。」
「あはは。でも、少しだったらいいよ。何かしてほしいことある?」
「じゃあギューってして。」
「ええー?」
「何でもしてくれるんじゃないの。」
「そこまでは言ってないよ。もっと、こう、軽いかんじで。」
「じゃあチュー。」
「ぜんぜん軽くなってないよ。」
「だって、あともう思いつかない。」
「仕方ないなあ。じゃあ、明日までに考えてきてよ。」
「うん。わかった。でも絶対、思いつかないよ。」
「そう?」


「あ、やっぱり、いっこあった。」
「なに?」


「部活行くまで、すこしだけでいいから、手つないでて。」




pretty step (120116)























「ぶんたの様子が変じゃ。」
「わっ仁王くん。変って一体なにが?」
「昨日から、自分のてのひらを見つめて黙ったままうごかん。妙だと思わんか。」
「ほ、ほんとに? そうなんだ……。(ぶんたくんって本当にわかりやすいんだなあ……。)」
「なんじゃ、おまえさんたちついにくっついたのか。」
「ち、違うよ。ただ昨日はぶんたくんが落ち込んでたから、手をつないだだけ。」
「ほう? 手をねえ。それはまた面白い流れやのう。」
「わたしもそう思ったけど、チューとかギューとかよりは、ライトかなと思って。」
「そうか。完全に感覚が麻痺しとるな。」
「ほんとにね。ぶんたくんの勢いに馴れちゃったのかな。」

「…………おれが落ち込んでるって言ったら、おまえさんは手つないでくれんのか。」
「え。仁王くん落ち込んでるの?」
「プリ。落ち込んでるといえば、落ち込んでるのかもしれん。」
「まあでも……仁王くんの周りには女の子いっぱいいるし。」
「誤解を招くことを。それじゃまるでおれが侍らせてるみたいじゃ。」
「違うの?」
。」
「ごめんごめん、冗談。」

「そういえばね、ぶんたくん、もっと大人になるって言ってたよ。」
「へーえ……まあお前さんが応援してやれば、きっとすぐじゃ。無理してでもやるぜよ。」
「やっぱり無理してるよね。でも意地になっちゃってて。」
もさっさと受け入れたらどうじゃ。ぶんたの告白を。」
「……でもなんか、どこまでがどう本気なのかなと思ったら、なかなかあんまりね。」
「はは、ぶんたも報われん奴じゃな。ここまで愛を叫んでおいて。」

「でも、最近気づくこといっぱいあるんだ。」
「なんじゃ。」
「ぶんたくんが私のこと分かろうとしてくれてるって。始めに私、お互いよく知らないからって言って振ったんだよね。」
「ああ、らしいな。むしろそれが一連のきっかけぜよ。」
「最初は好きな音楽とか食べ物とか聞かれて、いやそういうことじゃないんだけど、とは思ってたんだけど。」
「あいつは良い意味でまっすぐな男やからのう。」
「でもぶんたくん今、私がうれしいこととか、嫌なこと、ちゃんと分かってくれてるの。」
「…………。」
「ぶんたくんは無意識なんだろうけど、たまにそういうの見せられると、ちょっとうれしいなって。」

「…………はいはい。のろけはもう十分ぜよ。」
「の、のろけじゃないよ。ただの恋ばな……だよ。」
「同じじゃ。さて俺は部活にでも行くかのう。お前さんも顔出しに来たらどうじゃ。」
「えー。言っても私ふつうに部外者だからね。」
「そうじゃったっけ? 部員のモチベーション上げるのにはもってこいの材料なんじゃが。」
「それはぶんたくんが面白いことになっちゃうからでしょ。」
「プリ。」

「(そんなこんなでハッピーエンド、っちゅう感じかのう。それはそれでつまらん。)」
「なんか企んでる顔してるけど仁王くん、やめてよね。」
「…………ピヨ。」




one hesitation (120210)























ちゃんおはよ! 今日もかわいいね! 俺とつきあって!!」
「おはよう、ぶんたくん。いいよ。」
「もーそんっ………………え?」




??? (120317)























「あっ先輩! もしかして、練習見学しにきてくれたんすか!?」
「う、うん。このまえ仁王くんが来いって言ってくれたから。」
「やったー! 俺ちょうがんばるんで、見ててくださいね!」
ちゃん、そんな所にいないでこっちにおいでよ。ほら、ベンチに座って。」
「(いきなり現れるからびっくりした)ありがとう、幸村くん。」

「お。お前さん、ほんとに来たんか。」
「ぶんたの練習効率が上昇する確率、100%だ。」
「わ、わたしはちょっと見に来ただけだから。あんまり気にしないで。」
「そうは言ってものう。気になるもんは気になる。」
「貴女がいると、部員のモチベーションが違って見えますよ。」
「もう、柳生くんまで……。」
「で、肝心のぶんたはどうした。まだ来てないのか。」
「ピヨ。ダラダラと着替えておった。」
「まったく……あいつはたるんどる。一度喝を「ああーーーーーっ!!! こら、全員ジャマ! ちゃんから離れろ!!!」

「あーあ。うるさいのが来たっすよー。」
「るせーワカメ! 海はこっちじゃねーぞ!!」
「ぶんたくん!ま た切原くんにそういうこと言ってるの!」
「あっごめんねちゃん、俺ついうっかり。」
「助けてくださいよー先輩! ぶんた先輩ってばひどいんですよー!」
「(くそむかつくこのわかめ!!!)だーーもう! ちゃんから離れろよっこの!」
「ギャーぶんた先輩におそわれるー!!」

、こっちに来んしゃい。避難じゃ。」
「わっ、ありがとう。」
「こんだけ騒いでりゃ、が俺に攫われるのにも気づかんかもな。」
「え? ちょっと仁王くん、どこ行くの。」
「心配しなさんな、安全なところじゃ。」

「って今度は仁王かよ!! このっ、ちゃんを放せ!!!」

「うるさいのう。目を離したお前が悪い。」
「ちくしょー俺とちゃんが付き合ったとたんに本性あらわしやがってーー!!」
「ぶんたくん、その言い方はひどいよ。」
「ひどくない! ちゃん、仁王と二人っきりになっちゃだめだからな!」
「う、うん。わかった。」
「ピヨ、散々な言われようじゃな。あれだけ協力してやったのに。」
「それには感謝してっけど!!!! ありがとう仁王!!!!」

「面白いほど素直だな。」
「ふふっ。ばか正直なのって、ぶんたの可愛いところだよね。」
「思ったこと口に出してるだけっしょー?」
「それはお前も一緒だろう赤也。」
「えーっ? ぶんた先輩と一緒にしないでくださいよ!」


「よし、ここだとあいつら来ないから!ここから俺の天才的妙技見てて!」
「うん。がんばってきてね、ぶんたくん。」
「当たり前だろい! ちゃんのために、ぜってー一発で綱渡りキメるよ。」


「おーーーい!!! ちゃーーーん!!! 聞こえるーーーー!!??」
「…………えっ!? ぶんたくん?」
ちゃんだいすきだよーーー!!!!」
「ちょっ、ど、どこから叫んでるのぶんたくん! 恥ずかしい! 恥ずかしいからやめて!」
「俺めっちゃがんばるからーーー見ててーーー!!!!」
「見てる! 見てるから、もうやめてーー!!」




final love call (120317)























「あっちゃん! 一緒に帰ろ!」
「あれ、ぶんたくん部活は? さぼっちゃだめだよ。」
「今日はさぼりじゃないよ! 大丈夫!!」
「そうなんだ。じゃあ、一緒に帰ろっか。」
「うん!!!」

「あ、あのさちゃん、駅前のケーキ屋寄っていかない?」
「もしかして、あの新しくできたところ?」
「そう! ど……どうかな。」
「私も行ってみたかったから、いいよ。行こ!」
「!! ちゃん、笑顔まじかわいい!!」
「ぶ、ぶんたくん。そういうのは心の中だけに留めておいて。」

「? なんで?」
「なんでって……恥ずかしいから。」
「俺は口に出さないと気がすまないよ。ちゃん、かわいい。」
「あ、ありがとう。でも次大きな声で言ったら、怒っちゃうよ。」
「わかった。でも怒ってるちゃんもかわいいよ。」
「あーもう。ぶんたくん。」
「(照れてるちゃんが一番かわいいなあ。)」

・ ・ ・

「あっれー? まさかお二人さん、デートっすか?」
「赤也くん。今帰り?」
「おう赤也。さっさと帰れよー。海に。」
「ぶんたくん。」
「あっごめん。俺つい。」
「このやりとり何回目っすか。」

「っていうか、先輩を独占とかぶんた先輩まじズリーっすよ。」
「ふん、お前なんかにちゃんは渡さねーよ。」
「ぶんた先輩やめて俺にしません? 俺のほうが何倍もかわいいっすよ。」
「うるせー! 俺のほうがかわいいし!!」
「いや俺のほうがかわいいっす!!」
「う、うるさいよ2人とも。色んな人が見てるよ。」

「あっ、こんなことしてたらケーキが売り切れる。ちゃん、こんなヤツ放っておいて行こう!」
「行ってらっしゃーい。ぶんた先輩、リア充まじで爆発してください。」
「そのフレーズ久しぶりに聞いた! お前にちゃんは渡さねーからな!」
「じゃ、じゃあまたね、赤也くん!」
「ハーイ。先輩、いつでも俺に会いに来てくださいねー。」

「…………。」

「(ぶんた先輩、まじ幸せそー。先輩が彼女とかうらやましすぎ。ぜってーぶんた先輩より俺のほうがいいのに。)」

「…………。」

「(あれ、何この感じ。胸がイタイ。あれ。なんだこれ。ありえねー。まじ俺かわいそうじゃん。うわー。)」




breaking heart (120415)























「昨日クッキー作ってみたんだけど、どうかな。」
「!!!」
「ぶんたくんみたいに上手くは作れなかったけど……。」
「えっ、な、なんで、急に!!」
「ぶんたくんが甘いもの好きだから、作ってみようかなと思って。」
「う、うん! 俺、めっちゃ大好きだよ! ちゃんくらい大好き!!」
「なにが、甘いものが?」
「そう!! だからちゃんが作った甘いものとか、まじ最高! やばいよ!!」

「喜んでくれたなら嬉しいな。でも、あんまり美味しくないよ?」
「そんなことない! すげー旨いって!!」
「あ、ありがとう。ごめんね、わたし料理得意じゃなくって。」
「そんなのぜんっぜん大丈夫だよ。っていうか、じゃあ、今度は俺がなんか作ってくるし!」
「本当? ぶんたくんのお菓子、美味しいって仁王くんが言ってたよ。」
「でもちゃんのためなら、俺もっと頑張って美味しいヤツ作るから!!」
「うん。楽しみにしてるね。」

「てかちゃんのクッキー、ふつうに旨いよ。俺の好きな味!」
「そう? 良かった。」
「これで今日の部活もまじがんばれそう。ありがとうちゃん、大好き。」
「そ、そっか。うん。」

・ ・ ・

「お前さんらは微笑ましいのう。」
「あ、仁王くん。仁王くんも屋上でお昼?」
「仁王。何しに来たんだよ。俺とちゃんの昼休みをジャマするなよ。」
「ただ休みに来ただけじゃ。何もせんから、そんな警戒しなさんな。」
ちゃん、仁王のことなんて気にしなくていいよ。俺のこと見てよ。」
「そう言わず、俺のことも構いんしゃい。」

「(なんかぶんたくんって、テニス部の人に愛されてるんだなあ。)」
「(一緒にいたらいつも話しかけられるし、ぶんたくんも楽しそうだし……。)」
「(人の視線集めちゃうっていうか、ぶんたくんってやっぱり人気者なんだ。)」

「というかまず怖いのは、俺じゃのうて幸村じゃろ。」
「あーそれ同感。まじ怖い。」
「え? 何、なんの話?」
「いや……なんでもないよ。ちゃん。」
「そう。は知らんでいい話じゃ。」

「あっ誰かスマホ鳴っ…………おれだ!!! しかも幸村くん!!!!」
「すごいタイミングじゃー。あいつはやっぱタダ者じゃないのう。」

・ ・ ・

「そのクッキー、お前が作ってくれって頼んだんか。」
「ちがう! ちゃんからのサプライズプレゼント!」
「ほう? まあは、菓子作りが得意そうじゃな。」
「いやそれが、実はちゃんって全然お菓子作れねーらしい。それなのに頑張って作ってくれたんだ。俺に。俺のために! ほんとまじ俺、幸せすぎて死ぬかも!!」
「……さよか。良かったのう。」
「俺の好きなものを、自分が苦手でも頑張ってくれるって、ほんとなんか、なんていうか、俺ちゃんのこと大好き!!!」
「(日本語が危ない。)」

「ぶんた、ちゃんにクッキーを作ってもらったそうじゃないか。」
「ゆ、ゆゆ幸村くん!! そ、その情報どこで。」
「さっき仁王に聞いたよ。よかったじゃないか、ラブラブで。」
「う……うん。あっ、でも部活も本気でがんばってっから。ちゃんと。」
「分かってるよ。そんなの当たり前のことだろう?」
「…………だよね。」

「精市、何度も言うようだが、あまりいじめてやるな。」
「ごめんごめん、だって面白いんだもん。からかい甲斐があるよ、ぶんたは。」
「はは。憐れやのう、ぶんた。」
「そういうお前も、精市のことを言えないんじゃないか? 仁王。」
「ピヨ。」




talkative cat (120423)























「え、ぶんたはなんでヘコんでるの? 昨日はあんなに幸せそうだったのに。」
とラインしてて、うるさいって言われたらしい。」
「まじすか? うける。ラインでうるさいってどういうことっすか。」
「思いの丈を書き綴ったりしたんじゃろ。」
「あー。それはうるさいっすねえ。先輩かわいそ。」
「ぶんたへの風当たりがやけに強いのう。赤也?」
「別に、今までとおんなじですよ。ぶんた先輩うるさいもん。」
「でもこのままだと困るな。部活に支障が出るだろ。」
「……あれ、ぶんた先輩こっち来たっすよ。」

「なあみんな。おれどうすればいいと思う。」
「どうもこうも、事の経緯を説明してもらわんと分からんぜよ。」
「経緯も何もねーよ。ラインしてたらもうやめてって言われた。それから一言も送れてない。」
「うるさいって何したんだよ。スタンプ連打でもしたの?」
「連打っていうかハートついたスタンプをとりあえず全部押してみた。」

「うるさいな。」
「それはうるさいね。」
「うるさ! てかうざ!!」
「ああん!? ていうか、なんでおめーがここにいんだよわかめ! 教室帰れ!!」
「相談に乗ってあげんてでしょー!? 逆に感謝してくださいよ!」
「まあまあ。とにかく、スタンプ連発っていうのが良くなかったよね。」

「でもスタンプ押さないとさあ、伝わんないかなって思うじゃん。」
「適度に押せばええじゃろ。1個ずつとか。」
「勢いあまって2個くらい押したくなんね?」
「うざー。スタンプなんてたまにでいいじゃないっすか。」
「うるせーなあ。ちゃんが可愛いスタンプ押してくれるんだよ!」

「へー、どんな?」
「面白いのとか花飛んでるやつとか。あっ、たまにハートのやつもくれる!!」
「それでテンション上がって、スタンプ連発するんか。」
「はは、めんどくさいな。あんまりしつこいと、ちゃんに嫌われるぞぶんた。」
「(笑顔でさらっと言ってのける幸村、こわいのう。)」

「どうしよ……。ちゃんがもうおれとラインしてくれなくなったら。やばい。」
「スタンプ控えめにするから、って言えばええじゃろ。」
「そ……そうする。最大1個までって約束する。」
「あれ、じゃあそれからライン送ってないの? いつ?」
「昨日の夜。『ぶんたくんうるさい。おやすみ』って言われて、終わった。」
「(本気で辛かったんだなこの人……思い出してる顔が死んでる)」

「じゃあおはよう、ってそれだけで送ってみれば。」
「う、うん。そうす…………」

「おはよう。ぶんたくんいる?」

「!!!!!!」
「あ、。」
先輩! おはよーっす!」
ちゃん、おはよう。ぶんたなら此処にいるよ。」
「ほんとだ。教室にいなかったから、幸村君のところかなと思ってさ。」

「お……おはよう、ちゃん。えっと……。」
「なんだぶんたくん、ちゃんと元気なんだね。よかった!」
「え?」
「珍しくライン返ってこないから、具合でも悪いのかと思っちゃった。」
「……! ちゃん……!!」
「元気ならそれで――――、って、きゃあ!?」
「うわっ何してんすか、ぶんたせんぱ!」

ちゃん!! おれめっちゃうれしい! そんなにおれのこと心配してくれてたとかまじ嬉しすぎて死ねる!!」
「ぶ、ぶ、ぶんたくんちょっとこんなとこで……!」
「てっきり嫌われたかとおもった……! おれうるさいから! 昨日からめっちゃ落ち込んでて!!」
「う、うん。ごめん。言い方がきつかったかも。」
「もうおれスタンプ連打とかしないから! 絶対!! 約束する!!!」
「わかった、わかったよ。とりあえず落ち着いて、離して、ぶんたくん。」

「こういうことは家でやってくれないかな。」
「そうじゃそうじゃー。俺らへのあてつけか。」
「うざいなーホント。ここどこだと思ってるんすかね、教室っすよ。」
「しかも俺の。」
「悪いのう。ちゃんと連れて帰るから安心しんしゃい。」
「頼んだよ、仁王。あー暑いなあ。」




a cup of tears(120817)




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