Free妄想コンテンツ・オフィス編。通常版のページが重すぎたので分けました。ジャンルはオフィスに限らず増えるかもしれないし増えないかもしれない手探り出発です。名前変換はこちらから、感想・ご意見はこちらの拍手からお願いします!シチュエーションも大募集中です!わたしに妄想のネタをくださいよろしくお願いします!(160717始動)

□先輩が助けてくれました


遙の場合 企画開発部にいる3年目の七瀬さん。同じフロアでたまに見かけるけど、クールな雰囲気で挨拶もそこそこ、談笑するなんてもっての外。だけど仕事に対する情熱が人一倍だと聞いてから、なんだか存在が気になってしまう。ある日ミーティング前に大量の資料を持ってエレベータに飛び込むと、なんと七瀬さんとばったり出くわした。資料作りに追われてボロボロの姿を見られて恥ずかしいけど、お疲れ様です、と呟けば「お疲れ様」と小さく返ってきてちょっとだけ嬉しかったり。二人きりの空間が気まずくって、足早にエレベータを降りて会議室に向かうけれど、両手が塞がっていてドアが開けられず手間取っていると、スッと隣に人影が並ぶ。え?と顔を上げるとそこには七瀬さんの姿。近い距離に驚いているうちにドアが開けられて、「入れ」と促される。あ、ありがとうございます……と呟くと彼は頷いて、少しだけ口角を持ち上げて笑った!「頑張れよ」……予想外の優しい一言に呆然とする。自分の新人の頃と重ねて微笑ましく思ってる遙。七瀬さんってそういう優しい顔もするんだ……と気づいた瞬間から湧き上がってくる新しい感情。次に会ったときはもっとお話できるといいなあ!

真琴の場合 営業1課にいる3年目の橘さん。物腰の柔らかさが女子社員から人気で、いつも誰かと楽しそうに話しているのをよく見かける。自分なんか相手にもされないだろうな……と勝手に線を引いていた。ある日デスクで仕事をしていると、駆けこんできた上司に「急ぎで3人分のお茶用意して!」と指示され、とっさに給湯室まで走る。早くしなきゃ、と焦る気持ちが手元を狂わせ、湯のみに入れた熱いお湯をついこぼしてしまう。熱い!その瞬間、茶筒が倒れ茶葉まみれに……。ああどうしよう!一人でパニックになっているところに、「大丈夫?」と後ろから声が。振り返ると橘さんがいる。えっと、言いよどむとふっと笑って「落ち着いて」と目線を合わせてくれる。「それ、やけど?早く冷やさなきゃ」と手を捕まれ、蛇口をひねって冷水にあてられ、驚いていると「あ――いきなりごめんね」と笑う橘さん。少し気恥ずかしそうい「……泣きそうな顔してたから」と優しく微笑まれ、緊張と嬉しさで本当に泣きそうになってしまう。事情を説明すると準備を手伝ってくれて、「気をつけて」と送りだしてくれる。次の日に会ったときに「やけど大丈夫?」と気遣ってくれて面倒見の良さに胸がドキリ。相手にされないと思っていたのに、途端に湧き上がってくる新しい感情。もっとお近づきになれますように!

渚の場合 同じ営業2課にいる2年目の葉月さん。明るくおちゃらけた雰囲気だけど仕事はバリバリ。年が近いからと気さくに話かけてくれるけど、パリピっぽいし自分と一緒にいても楽しくないだろうなとどこか遠く感じていた。ある日仕事中、上司に土曜日の接待ゴルフに誘われ、断れそうにない雰囲気に困っていると、ふと助け船が。「課長、ちゃんはその日僕と一緒に担当先にご挨拶に行くんですー!だからゴルフは行けませーん」えっ、と思いつつ話を合わせていると、葉月さんはウインクを寄越して打ち合わせブースまで連れ出してくれた。課長に隠れて悪戯っぽく笑う葉月さん。「勝手にごめんね!困ってるみたいだったから」いえ、助かりました!本当に!「なら良かった。同行は適当なこと言ってナシになったって言っとくから、気にしなくていいよ」なんかそういう小細工が上手そう……と思ったのは秘密。向かいあって座っているとじーっと見つめられ、見透かすような視線にたじろいでいると「ちゃん、全部顔に出てる」とくすくす笑われ、大人びた仕草にちょっとだけドキリ。葉月さんって意外と落ち着いてて、冷めた所があるんだなあ……。そう思うとギャップから目が離せなくなってしまう。たまに核心を突くようなことも言われるし、人のことをよく見てるし、気が利くし。おちゃらけた雰囲気は全部計算?じわじわと湧き上がる興味と新しい感情。葉月さんのこともっと知りたい……かも!

凛の場合 マーケティング部にいる3年目の松岡さん。ホープなんて呼ばれて結果を出している有名人で、どこか雲の上の人。仕事の関係でちょっとだけ話したことがあるけれど、もう忘れられてるだろうな、なんて思ったり。だけどまた一緒に仕事をすることになり、顔を合わせると思ったより気さくに「おう」と挨拶してくれて少し嬉しくなる。彼の仕事ぶりに感心しながら、ミーティングや企画書づくりに追われる日々で小さなミスが重なって、いつもより遅くまで残業してカバーすることに。すると松岡さんが顔を出してくれた。「?まだ残ってたのか」と驚いた顔をしつつも、一緒にパソコンを覗きこんで、行き詰っているところに助言をくれる彼。面倒見が良いなあ……指摘も的確だし、こういうところが人望を集めるのかな。なんて思っていると目が合って、くしゃっと笑顔を見せてくれた。「あんまり根つめすぎんなよ。疲れちまうぞ?」頭をポン、と軽く撫でて去っていく彼の背中に胸がドキリ。仕事が立て込んで毎日しんどかったけど、ちゃんと見てくれてるんだ。ありがとうございます、と声をかけると目だけで振り返って手を振ってくれる。ああ、なんか嬉しいかも。彼の頼もしさにときめいて、胸に湧き上がる新しい感情。もうちょっと頑張ろうかなあ、なんて!

怜の場合 製造部にいる2年目の竜ヶ崎さん。理系出身の彼は冷静沈着で、若手ながらもエースとして期待されているらしい。ひょんなことから一緒に仕事をすることになったけれど、顔合わせでの印象はザ・理系って感じでちょっとお固そうな感じ。年が近いとはいえ不安だなあ……なんて思っていたある日、製造部まで向かう道すがら、下ろしたてのパンプスで靴擦れを起こして廊下で立ち往生してしまった。痛くて歩けそうにない、血も出てる。どうしようかと思っていると竜ヶ崎さんが目の前に。「どうしました?靴擦れですか?……ちょっと待っていてください」な、なんか怒ってる?と思いながら待っていると、ガラガラと音を立てて何かが近づいてくる。よく見ると、キャスター付きのイスと竜ヶ崎さん!?「さあ、乗ってください!とりあえず会議室までご案内します!」ええっ!?「足が痛いなら無理しないでください。すぐに応急処置をしなくては!」は、はい!勢いに負けてイスに座るとガラガラ押して連れて行ってくれる。皆こっち見てる、恥ずかしい!けどすごい助かる!!会議室につくと竜ヶ崎さんは手当てまでしてくれて「これでどうでしょう!」と満足げ。竜ヶ崎さんって実は天然なの?驚きつつも彼の温かな優しい人柄に触れて、胸に湧き上がる新しい感情。彼のこともっと知りたい……かも!

宗介の場合 経企部にいる3年目の山崎さん。大抜擢で大変な仕事だって聞いてるけど、そんな様子を微塵も見せないどころか、近寄りがたいオーラを出しているやり手の人。会議でたまに一緒になるけれど大人っぽい雰囲気にいつも圧倒される。ある日、会議の準備のためにプロジェクターを抱えながらホワイトボードを移動させていると、角を曲がり切れず壁に激突してしまう。やばい、人が来る前に早く……と慌てるけれどなかなかコントロールが利かない。はっと気がつけば後ろに影ができて、男の人の腕が伸びてくる。何!?と見上げると、そこにいたのは山崎さん。「……何してんだ」いえ、その、会議の準備で!「へえ」と言いつつもそのままホワイトボードを押して行ってくれる。もしかして助けてくれた?プロジェクターを抱えながら追いかけてお礼を言うと、山崎さんはこちらに振り返ったかと思ったら腕を伸ばして、プロジェクターまで持ってくれた。唖然としていると「お前、意外と無茶するんだな」え?「その荷物にこれって、どう考えても無茶だろ」なんてからかうように笑ってる。山崎さんって意外とよく笑うんだ、そう思えば急に親しみやすく感じて、なんだか嬉しいなんて思ったり。頼もしい彼の後ろ姿を見つめて、ドキドキと湧き上がってくる新しい感情。もっとお近づきになれたらいいなあ……なんて!

2016.07.17

□出勤が重なりました


遙の場合 駅のホームを出たところで姿を見つけ、声をかけようと後ろから駆け寄ると、七瀬さんの髪がちょっとだけ濡れている。朝シャン派なのかな?と思いつつ勇気を出しておはようございます、と隣に並べばいつものごとくクールな瞳が寄越され、「……おはよう」とワンテンポ遅れて返事が返ってくる。朝は三割増しで不機嫌に見える遙。髪濡れてますね、と言えば「ああ、水に入ってきた」と返され水……??となり会話が途絶える。女の子が頑張って話題を振っていると遙はぼーっと「(よく喋るな……)」と思ってまじまじ見つめ、その視線に気がついて女の子が首を傾げると「いや……朝から元気だなと思って」とぴしゃり、言い方が冷たいので女の子はショックを受け、うるさかったですか?と落ち込むのですが、遙は何が?みたいな顔をして「別に」と一言。そしてふと口角を持ち上げたかと思ったら「お前はいつも笑ってるなと思ったんだ」と、びっくりするくらい優しく笑ってくれるので女の子は撃沈します。いつもって何、どういうこと!?テンパっている姿を見てうっすら笑う遙。エレベータでもお互い無言で顔を上げられません。水の謎が解けるのはまた後日?無意識にたらしこんでいる七瀬さんです。

真琴の場合 ビルに向かうまでの途中、横断歩道に立ち止まりふと見上げると橘さんの姿が。声をかけられずにいた女の子の視線に気づき、「さん。おはよう、今日も暑いね」と屈託なく笑ってくれる。朝から穏やかニコニコ通常運転。なんとなく一緒に歩いてみるけれど、緊張しすぎてうつむいてしまう女の子を見てくすっと笑って「職場には慣れた?」と聞いてくれる橘さん。まだ緊張してますと素直に告げれば、無邪気な笑顔で「俺も最初はそうだったなあ」と飾らない返事をくれて、楽しく雑談しながらビルの入り口へ。エレベータにぎゅうぎゅうに詰め込まれながら、密着して気まずそうに頬を赤くしてる女の子を見て、初々しい微笑ましさ以外の感情をなんとなく自覚する真琴。違うフロアで降りて、振り返って会釈する女の子とアイコンタクトを取りながら、さんって可愛いひとだなあ……とぼんやり思います。そんなこと思ってたらセクハラになるかな?と斜め上に葛藤。先輩としての思いなのか、一人の男としての感情なのか、気づくまでに時間がかかりそうな橘さんです。

渚の場合 駅の改札を出たところで肩をポンと叩かれ、振り返ると葉月さんの姿が。驚きながらもおはようございます!と元気よく挨拶すると「おっはよー!偶然だねちゃん!」と2倍くらい元気よく挨拶されて圧倒される。葉月さんは朝からこうなんだ……と素直に感心。「地下鉄ギュウギュウだねー!毎朝あれ乗ってるの?大変だねー!」とオーバーな反応を交えて面白おかしく話しているうちに、あっという間に会社に到着。エレベータに乗りこんで、ふと見上げると葉月さんの頬に汗が、なんて思っているとおもむろに襟をくつろげて、ふうっと一息つく渚。ばちっと視線が重なって「どーしたの」と小首を傾げられて思わずドキリ。可愛らしい顔してるけど、やっぱり葉月さんも男の人なんだよなあ……。何でもないです、と言いつつ意識してるのはバレバレ。同じフロアで降りて、それじゃあと手を振りながらその背中を振り返って、意外と逞しいのかも……なんて見惚れてしまってからハッとする。何考えてるのわたし!それからは朝に会えるのをちょっとだけ期待したり、渚も女の子の姿を探してみたり、お互い遠くから姿を見つけて手を振ってみたり。じわじわと距離を詰めていくタイプの葉月さんです。

凛の場合 ビルに向かうまでの道のりで後ろ姿を見つけ、声をかけようか悩んでいるうちに横断歩道に差し掛かり、赤信号をきっかけに隣に並ぶ女の子。お、おはようございます!と声をかけると眠そうな顔の松岡さんがこっちを見て、「おう……」とため息交じりに挨拶をくれる。眠そうですねと言えばあくびをしながら「昨夜テレビに夢中になっちまってさ……」と後ろ頭をかきながら苦い顔をする松岡さん。そういや昨夜は深夜に世界水泳があったはず。いつもはビシバシ仕事してる松岡さんがこんな油断した表情を見せるなんて、と思えばつい笑みがこぼれる。「何笑ってんだよ?」だって意外だったから、と口元を押さえると「何がだ?」みたいな顔する。自分のことをよく分かっているくせに、女性社員からの視線に疎い松岡さんは自分のかっこよさに無自覚です。そういうのも意外で親しみやすさがあって、身近に感じるたびに惹かれて行く女の子。そのくせエレベータに乗りこんだとき、他の人にぶつかりそうになっているとさりげなく腕を引いてくれたり、気づいてないようでしっかり庇ったりしてくれるズルい男前な松岡さんです。

怜の場合 地下鉄を降りた瞬間、「さん!」と声をかけられ振り返ると竜ヶ崎さんが。どうして!?と聞けばなんと同じ路線らしい。同じ車両に乗ってたということはもしかして……と恐る恐る聞いてみると、「あ……実は見てしまいました。悪いとは思ったのですが……盛大に眠ってらしたので、つい」とくすくす笑われて真っ赤になる。恥ずかしい!だけど、楽しげに笑っている竜ヶ崎さんの笑顔にちょっとだけ見惚れてしまう。見た目よりずっと柔らかいひとだなあ。竜ヶ崎さんは何気に、女の子が隣のお兄さんに寄りかかっていたのが少し気になっていたりします。いつもあんな風に眠ってるんだろうか、と思えばチクリと胸を刺す思いは何だろう。会社までの道のりを歩きながら、初めてゆっくり話をしてみて互いに惹かれて行くのを実感する二人。エレベータの待ち時間にふと沈黙が訪れて、ちらと見上げると目が合って気恥ずかしくなったり、違うフロアに別れてからはーっとため息が零れたり。次に車内で会うときは少し遠くからアイコンタクトを取ってお互い照れくさくなったりします。ふと女の子の寝顔を思い出しては、可愛らしいところがあるんだなあ、なんて思って笑ってしまう竜ヶ崎さんです。

宗介の場合 ビルに向かうまでの道のりでばったり会う。気だるそうなのはいつものこと、だけど朝はいつにも増して機嫌が悪そうで声なんか掛けられる雰囲気じゃない……とこそこそしてると逆に気づかれて名前を呼ばれる。はいっ!と返事をして振り返れば「よう」と当たり前のようにとなりに並ぶ山崎さん。あ、一緒に行く感じか……と思うと途端に緊張してしまいます。「いつもこの時間に来てんのか」偉いな、とぼそり。その方が地下鉄が空いてるので、と答えれば「ああ……潰れちまいそうだもんな」と一言。本気で言ってるのか、冗談で言ってるのか分からず困惑してると、それすらも見透かしてくすくす笑う宗介。緊張はするけど不思議と居心地は悪くない。混んでるエレベータに乗りこんで、後ろからその背中を見上げて、やっぱりガタイいいなあなんて思っていると、ふと振り返って「潰されんなよ」と小声で囁いて意地悪に笑う山崎さんに思わずドキドキしてしまいます。やっぱりからかってる!だけど、意外と無邪気な顔するんだなあ……。どこまでが本気?どこまでが駆け引き?気づけば手の平で女の子を転がしている山崎さんです。

2016

□サボってるのを目撃しました


課の先輩、遙の場合 給湯室に向かうと、自販機の影に誰かがいる。そっと覗いてみると、スマホ片手に険しい顔した七瀬さんがいた。思わずビックリして何してるんですか?と声をかけるとあからさまに顔をしかめられる。「サボってない」な、何も言ってないのに……とドギマギしていると廊下から人の話し声。「来い」と言われたかと思えば、七瀬さんに腕を引かれて自分まで自販機の影に!人の声が過ぎて行くまでじっと向かいあったまま黙っている。誰かと連絡してたんですか?と沈黙を破って聞いてみると、ため息をつきながら「……幼馴染。今夜飲もうって」とダルそうに空を仰ぐ七瀬さん。いいじゃないですか、と笑えば「良くない。面倒くさい」と子どもみたいに駄々を捏ねる横顔がなんだか可愛い。しばらくそのまま話して、また人が通りかかったときにハッとする。な、なんでこんな狭い所で話しこんでるんだろう……!慌ててもう行きます、サボらないでください、と捨て台詞を残そうとするとにっと笑った七瀬さんに「お前も共犯だろ」とからかわれる。そ、そうかもしれないですけど……!?テンパるほどに面白そうに笑われてしまう。七瀬さんってマイペースで、少し意地悪なのかも。思わずドキドキしてしまう昼下がりのワンシーン。

課の先輩、真琴の場合 給湯室に向かうと、潜めるような話し声が聞こえてくる。覗いてみれば、背中を丸めてこそこそ電話をしている橘さんがいた。こっちに気がついた橘さんは途端に慌てて「も、もう切るよ。ちゃんと学校行くんだぞ?」と言って電話を切る。な、なんだかすみません……と謝れば困った顔した橘さんは首を振って、「俺こそ変なところ見せちゃって……」実は年の離れた妹がいるんだ、と照れくさそうに頬をかく。電話を聞かれてしまったのが恥ずかしいらしく、「お願いだから忘れて」と念を押してくる橘さんが可愛くて、ついつい芽生える悪戯心。なんだか可愛いかも……。いいお兄ちゃんですね、なんて笑ってみると赤くなって「参ったなあ」と顔を抑える橘さん。ふと自販機を指出して、「ジュース買ってあげるから、黙っててくれる?」なんて眉尻を下げた顔して言われたら、ますます可愛いお兄ちゃんに見えてしまう。だけど、どれがいい?と選ばせてくれる微笑みは優しくて、やっぱり結局余裕のある一面にキュンとさせられてしまう。面倒見もいいお兄ちゃんな姿を知れてドキドキ……!新しい一面が見れて嬉しい昼下がりのワンシーン。

課の同期、渚の場合 給湯室に向かうと、自販機の影からしゃがみこんだ人の姿が見える。覗いてみれば、ひざの上に肘をついてスマホをいじっている葉月さんがいた。あっ!と声を上げそうになるのを「しーっ!」と牽制され、隣をポンポンとされて座らされる。な、何してるんですか?と聞けばニヤッと笑って「何してると思う?」と聞く葉月さん。サボり?と恐る恐る答えてみれば「せいかーい」、悪戯っぽく笑って「正解者にはこれをプレゼント!」と小さなチョコレートを手渡される。これをあげるから黙ってろってことかな……と食べながらちらっと覗き見れば、ずっとこっちを見ていたらしい葉月さんが頬杖をつきながらニコニコしてる。「あーあ、ちゃんサボりかー、悪い子だなー」ち、ちが……!「罰として、もう少し僕につき合うこと!」いーい?と言いながらも有無を言わせない、強引な葉月さんにドキドキ。もう、仕方ないなあ……と言いつつ楽しんでる自分がいるかも。こそこそ話しながら、ふと顔を覗き込んで「っていうか、そろそろ渚くん、って呼んでよ」なんて言われて驚いたり。もしかしてからかわれてる?だけどなんだか目が離せない。駆け引きの始まる昼下がりのワンシーン。

課の先輩、凛の場合 給湯室に向かうと、自販機の影から話し声が聞こえてくる。覗いてみれば、スマホで電話中の松岡さんがいた。なんだか砕けた口調で楽しそうに笑ってる……声をかけちゃいけない気がして立ち去ろうとするも、影のせいでバレて目が合ってしまう。げっ、という顔をして眉をしかめ「じゃーな」と電話を切り上げる松岡さん。さっと逃げようとしたのを「待て、!」と捕まえられ給湯室に逆戻り。「聞いてたのか?」は、はい……楽しそうだったので声をかけれませんでした、と素直に答えれば松岡さんは何とも言えない表情で唇を噛む。「くそ……俺がサボってたこと誰にも言うなよ」頷きつつ、さっきまでの楽しそうな笑顔を思い出してニヤニヤしていると、少し恥ずかしそうな松岡さんに「んだよ。その顔」と頬をつねられる。痛い!「飲み物おごってやるから忘れろ」選べ、と自販機を指す松岡さん。なんだかんだ面倒見がいいなあ、とお言葉に甘えて買ってもらいつつ、電話の相手って……と核心に迫ってみるとダルそうに振り向いた松岡さんは「……気になるか?」とニヤリ。べ、別に!と言いながらも動揺はバレバレ。結局からかわれてしまう、いつも通りの昼下がりのワンシーン。

課の同期、怜の場合 給湯室に向かうと、切羽詰まった話し声が聞こえてくる。何だろう?と覗き込めば焦った様子で声を潜めて電話をしている竜ヶ崎さんがいた。電話の相手に強い口調で何かしゃべってる……思わずまじまじと見つめているとハッと目が合って、「き――切りますよ、渚くん!それでは!」と強引に電話を切る。なんかすみません……と言えば動揺しながらも眼鏡を押し上げて「い、いえ僕こそお恥ずかしいところを」と向かいあって黙り込む。興味本位で、珍しいもの見ちゃいました、なんてからかってみると顔を赤くした竜ヶ崎さんは頭を抱えて、「が、学生時代の友人からかかってきまして。仕事中だというのにまったく……!」と困り顔。そのまま去ってしまうかと思えば、給湯スペースに寄りかかって珍しく休憩モードの竜ヶ崎さんの隣に並んで少し雑談。ふと自販機を指した「変なところをお見せしたお詫びに、ご馳走します」選んでくださいとはにかむ竜ヶ崎さんに、いいんですか?と聞けば「ええ、勿論」と穏やかな返事が返って来る。休憩は休憩、仕事は仕事と割り切って効率を上げる竜ヶ崎さんのギャップと余裕に少しドキドキ。親しい人にだけ見せる一面がもっとあるのかな?彼への新たな興味がわいてきた、昼下がりのワンシーン。

課の先輩、宗介の場合 給湯室に向かうと、背を向けて壁に寄りかかっている人影が見える。誰だろうと覗き見れば、コーヒー片手に休憩中の山崎さんがいた。サボりですか、と思わず聞いてしまうと山崎さんは「人聞きの悪いこと言うな」と首を傾けてくすくす笑う。手招きをされて近けば、「何が飲みたい?」と自販機を指してご馳走してくれる。わーい、と買ってもらったコーヒーに口をつけるや否やボソリと「サボりとは関心しねーなあ」と意地悪な一言。ち、違いますよ!と反論しても相手にしてくれない。ずるい……けどありがとうございます、素直に言えばしれっと「これで共犯だな」と呟き二人で並んで休憩する。二人だけの秘密っぽくてなんかドキドキする……なんて考えてると視線を感じて、はっと顔を上げれば山崎さんがニヤニヤしてる。「素直だな、お前」と意味深に笑われて思わず照れてしまう。もしかしてずっと見つめられてた?相変わらず何考えてるか分からないけど、からかわれてるだけなのか、期待してもいいのか悩ましい。コーヒーを飲み干すまでもう少しここにいたいなあ。少し切なくなる昼下がりのワンシーン。

2016



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